% 基本事項I1.1.1:単項式と多項式(One More)
(1)数や文字,またはそれらを掛け合わせてできる式を単項式という.単項式において,掛け合わせた文字の総数をその単項式の次数という. また,数の部分を係数という. 2種類以上の文字が含まれる単項式では,1つの文字に着目して係数や次数を考えることがあり,このとき他の文字は数と同様に扱われる. (2)多項式とは,複数の単項式の和で表される式であり,これら単項式を多項式の項という.多項式は整式ともいわれる. (3)多項式において,文字部分が同じである項を同類項という.多項式は,同類項を1つにまとめて整理することができる. (4)同類項をまとめて整理した多項式において,最も次数が高い項の次数をその多項式の次数とし,次数が$n$の多項式を$n$次式という. 2種類以上の文字を含む多項式においても,特定の文字に着目し,他の文字は数として扱うことがある. 多項式において,着目した文字を含まない項を定数項という.
% 基本事項I1.1.2:多項式の整理(One More)
多項式において,特定の文字に着目して,その文字の次数が高いものから低いものへと並び替えることを降べきの順に整理するという.逆に,次数が低いものから高いものへと並べ替えることを昇べきの順に整理するという.
% 基本事項I1.1.3:多項式の計算(One More)
\begin{tabular}{|c||c|c|} \hline &加法&乗法\\ \hline 交換法則&$A+B=B+A$&$AB=BA$\\ \hline 結合法則&$(A+B)+C=A+(B+C)$&$(AB)C=A(BC)$\\ \hline \end{tabular} 分配法則$\cdots A(B+C)=AB+A C,(A+B)C=AC+BC$ とくに$A-B$のような場合においては,括弧を忘れないように注意すること(右の例を参照).また,分配法則を用いて多項式を変形,単項式の和のみの形にすることを多項式の展開という.
% 基本事項I1.1.4:指数法則(One More)
$m, n$を正の整数とする.このとき,次の指数法則が成り立つ. $$a^m\times a^n=a^{m+n},(a^m)^n=a^{mn},(ab)^n=a^nb^n$$ なお,$2\times 3$を$2\cdot 3$とも表す.
% 基本事項I1.1.5:乗法公式(One More)
(1)$(a+b)^2=a^2+2 ab+b^2$ (2)$(a-b)^2=a^2-2ab+b^2$ (3)$(a+b)(a-b)=a^2-b^2 $ (4)$(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab $ (5)$(ax+b)(cx+d)=acx^2+(ad+bc)x+bd $ (6)$(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$ (7)$(a+b)^3=a^3+3a^2 b+3ab^2+b^3 $ (8)$(a-b)^3=a^3-3a^2 b+3ab^2-b^3$ 式を整理するときには, 「アルファベット順」 「輪環の順」 「降べきの順」 などが有効である. これらを用いて,式を見やすく整理することが推奨される.
% 基本事項I1.1.6:因数分解(One More)
1つの多項式を,1次以上の多項式の積の形に変形することを,もとの式を因数分解するという.このとき,積を構成する各式を,もとの式の因数という. 多項式の各項に共通の因数が存在する場合には,その共通因数をくくり出し,括弧の外にくくり出すことにより因数分解を行うことができる. (1)$a^2+2ab+b^2=(a+b)^2 $ (2)$a^2-2ab+b^2=(a-b)^2 $ (3)$a^2-b^2=(a-b)(a+b)$ (4)$x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)$ (5)$acx^2+(ad+bc)x+bd=(a x+b)(c x+d)$ (6)$a^3+3a^2 b+3ab^2+b^3=(a+b)^3 $ (7)$a^3-3a^2b+3ab^2-b^3=(a-b)^3 $ (8)$a^3+b^3=(a+b)\left(a^2-ab+b^2\right)$ (9)$a^3-b^3=(a-b)\left(a^2+ab+b^2\right)$ (10)$a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+c)\left(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca\right)$ (11)$a^4+a^2+1=\left(a^2+a+1\right)\left(a^2-a+1\right)$ なお,与えられた多項式を因数分解するときには,とくに指定がない限り,因数の係数を有理数の範囲内で考える.
% 基本事項I1.2.1:実数(One More)
(1)自然数(Naturalnumber)$1, 2, 3, \ldots$に$0$と負の整数$-1,-2,-3, \ldots$を合わせて整数(Zahlen)という. 余談:Zahlenはドイツ語で数を表す.また,自然数に0を含むという考え方もある. (2)整数$m$と$0$ではない整数$n$を使い,分数$\frac{m}{n}$の形で表される数を有理数(Quotient,Rationalnumber)という.整数$m$は$\frac{m}{1}$として表すことができるので,整数も有理数の一種である. (3)整数ではない有理数を小数で表すとき,それは有限小数になるか,あるいは循環する無限小数(循環小数)となる. 循環小数は,循環する最初と最後の数字の上に$\bullet$をつけて表すことができる.また,有限小数や循環小数は,常に分数の形で表すことができることが知られている. (4)整数,有限小数,または無限小数で表される数を実数(Realnumber)という. (5)実数の中で有理数ではないものを無理数という.無理数を小数で表すと,$\sqrt{3}=1.732\ldots, \pi=3.141\ldots$のように循環しない無限小数となる. 自然数全体の集合,整数全体の集合,有理数全体の集合,実数全体の集合は,それぞれ,$\mathbb{N}, \mathbb{Z} , \mathbb{Q}, \mathbb{R}$という記号で表されることもある.
% 基本事項I1.2.2:絶対値(One More)
数直線上の点$\mathrm{P}$の座標が$a$のとき,$\mathrm{P}(a)$と表される.原点$\mathrm{O}(0)$と$\mathrm{P}(a)$の間の距離を$a$の絶対値といい,記号$|a|$で表す. (1)$|a| \geqq 0$ (2)$|a|=\left\{\begin{array}{rl} a &(a \geqq 0)\\ -a &(a<0) \end{array}\right.$ $a \geqq 0$ $a<0$
% 基本事項I1.2.3:平方根(One More)
(1)$x^2=a$を満たす数$x$を$a$の平方根という. 正の数$a$の平方根は2つあり,その絶対値は等しく,符号が異なる. 正の平方根を$\sqrt{a}$,負の平方根を$-\sqrt{a}$と表し,両方をまとめて$\pm \sqrt{a}$と記す.0の平方根は0のみであり,$\sqrt{0}=0$と定める.なお,記号$\sqrt{ }$を根号といい,$\sqrt{a}$を「ルート$a$」と読む. (2) $$\sqrt{a^2}=\left\{\begin{array}{rl} a &(a \geqq 0)\\ -a &(a<0) \end{array}\right.$$ (3) $a>0, b>0, k>0$のとき, $$ \sqrt{a} \sqrt{b}=\sqrt{ab}, \frac{\sqrt{a}}{\sqrt{b}}=\sqrt{\frac{a}{b}}, \sqrt{k^2 a}=k \sqrt{a} $$ (4)分母に根号を含む式を変形して,分母に根号を含まない式にする操作を,分母を有理化するという. $$ \frac{1}{\sqrt{a}}=\frac{\sqrt{a}}{a}, \frac{1}{\sqrt{a} \pm \sqrt{b}}=\frac{\sqrt{a} \mp \sqrt{b}}{a-b}(\text{複号同順}) $$ (5) 2つの数の大小関係は,次の原理に基づき簡単に判定できる. $\alpha \geqq 0, \beta \geqq 0$のとき, $$ \alpha>\beta \Longleftrightarrow \alpha^2>\beta^2 $$ この原理の特別な場合として,次の関係が成立する. $a \geqq 0, b \geqq 0$のとき, $$ a>b \Longleftrightarrow \sqrt{a}>\sqrt{b} $$ (6) 根号内にさらに根号が含まれているものを2重根号という. $$ \begin{aligned} & \sqrt{a+b+2 \sqrt{ab}}=\sqrt{(\sqrt{a}+\sqrt{b})^2}=\sqrt{a}+\sqrt{b}(a>0, b>0), \\ & \sqrt{a+b-2 \sqrt{ab}}=\sqrt{(\sqrt{a}-\sqrt{b})^2}=\sqrt{a}-\sqrt{b}(a>b>0) \end{aligned} $$ (7) 基本的な平方根の近似値は,次のように語呂合わせを用いて記憶することが推奨される. $\sqrt{2}=1.41421356\dots$\ruby{一夜一夜}{ひと|よ|ひと|よ}に\ruby{人見頃}{ひと|み|ごろ} $\sqrt{3}=1.7320508\dots$\ruby{人並}{ひと|な}みに\ruby{奢}{おご}れや $\sqrt{5}=2.2360679\dots$\ruby{富士山麓鸚鵡鳴}{ふ|じ|さん|ろく|おう|む|なく} $\sqrt{6}=2.44949$\ruby{似}{に}よよくよく $\sqrt{7}=2.64575\dots$\ruby{菜}{な}に\ruby{虫}{むし}いない $\sqrt{8}=2.828427\dots$\ruby{庭}{にわ}には\ruby{呼}{よ}ぶな
% 基本事項I1.3.1:不等式(One More)
(1)数量の間の大小関係を,不等号$>,<, \geqq , \leqq $を用いて表した式を不等式という.不等号の左側を左辺,右側を右辺といい,左辺と右辺を合わせて両辺という. (2)不等式についても,等式とよく似た性質が成り立つ.不等式についても等式の場合と同様に,移項することによって,与えられた不等式を簡単な形に変形できる. $$ \begin{aligned} & a<b \Longleftrightarrow a+c<b+c, \\ & a<b \Longleftrightarrow a-c<b-c, \end{aligned} $$ $$ \begin{aligned} & c>0 \text { のとき, } a<b \Longleftrightarrow a c<b c, \\ & c>0 \text { のとき, } a<b \Longleftrightarrow \frac{a}{c}<\frac{b}{c} \end{aligned} $$ とくに,負の数$c$を両辺に掛けると不等号の向きが逆転するので注意すること. $$ \begin{aligned} &c<0 \text { のとき, } a<b \Longleftrightarrow a c>b c, \\ & c<0 \text { のとき, } a<b \Longleftrightarrow \frac{a}{c}>\frac{b}{c}\end{aligned} $$ (3)$x$が満たすべき条件を示す不等式(これを$x$に対する不等式という)において,不等式を満たす$x$の値を,その不等式の解といい,不等式を満たすすべての$x$の値を求めることを不等式を解くという. また,不等式のすべての解の集合を,その不等式の解集合ともいう. (4)不等式においてすべての項を左辺に集めて(右辺が$0$になるように)整理したとき,$ax+b>0$,$ax+b \leqq 0$のように,左辺が$x$の1次式となる不等式を,$x$に関する1次不等式という.ここで,$a, b$は定数であり,$a \neq 0$とする. 数直線上に不等式の解を示すときには,右の図のように行う.本書では「$<$」「$>$」の場合は$\circ$,「$ \leqq $」「$ \geqq $」の場合は$\bullet$を用いて表す.
% 基本事項I1.3.2:絶対値と方程式・不等式(One More)
$a>0$のとき,次のことがいえる. $$ \begin{aligned} & |x|=a \text{ の解は,} x=\pm a \\ & |x|<a \text{ の解は,}-a<x<a \\ & |x|>a \text{ の解は,} x<-a, x>a \end{aligned} $$ 絶対値記号を含む方程式,不等式を解くには, $$ |A|=\begin{cases} A &(A \geqq 0)\\ -A &(A<0) \end{cases} $$ より,絶対値記号を外して計算すればよい.